『暗やみに能面ひっそり』(佐藤まどか)

タイトルとカバーイラストとデザインが満点です。
夏休みに京都の祖父母の家に預けられた小学4年生の少年宗太の物語。祖父は能面師で、工房には怖かったりおもしろかったりする「顔」がたくさん並んでいました。夜にカンテラの明かりを頼りにひとりで工房に行くという肝試し遊びをすることになり、さらに「顔」の奥深さを知っていきます。
分量があまり多くなく、さらっと伝統文化について学べる内容になっています。佐藤まどかのいつもの技術者礼賛もあっさりめになっているので、読みやすかったです。
宗太は面の表情から人間の感情の多面性を知るという逆転した学習をします。そして、離婚した両親の感情や可能性について考えを深めていきます。カバーイラストから期待されるようなホラー要素はあまりなく、あくまで人間の怖さが追求されます。親のモラハラのひどさを考えると、大人の前で過剰にお道化てみせる宗太にも闇が感じられます。イラストや擬音もあいまって、ラストも結構不気味なんですよね。