『5分で本を語れ チームでビブリオバトル!』(赤羽じゅんこ)

読書部に所属する中学生童夢は、自信満々で挑んだ校内のビブリオバトルで特に本好きでもない放送部員のさくやにまさかの大敗を喫します。さくやは学校代表として出版社主催の中学生ビブリオバトル大会への出場権も得ます。出版社の規定通りのビブリオバトルで5回チャンプ本に選ばれれば大会への出場権を得られるというルールを頼りに、童夢は敗者復活を目指します。
様々な人の助力を得ながら童夢が本の魅力を人に伝える技術を磨いていく努力の過程がみどころです。真っ先に現れる協力者が落語少年だというのは著者の趣味がですぎているような気もしますけど。
さらに注目すべきは。裏主人公としてのさくやの動向です。さくやは先生受けはいいけれど横の人望が全くないタイプの子どもでした。本に興味がないのに勝ってしまったことにモヤモヤする彼女も、真剣にビブリオバトルに取り組もうとします。みんなに助けられながら進む童夢と独立独歩で進むはぐれ者のさくや、正反対のあり方をどちらも肯定しているところが、この作品の特徴です。
物語が進み、読書好きのライバルたちと切磋琢磨していくと、自然とビブリオバトルは楽しいものになっていきます。そもそも、物語の発端の校内ビブリオバトルで失敗したのは童夢ではありません。読書を楽しむ集団を育てていないなかで、大勢の前で話すための最低限のレクチャーもせず、全校生徒の前でビブリオバトルをさせてしまった学校側が失敗しているのです。ビブリオバトルで重要なのは「場」と「人」であることがわかっていないと、学校でビブリオバトルをやるのは難しいです。