『ティリー・ページズと魔法の図書館』(アナ・ジェームス)

ロンドンで書店を営む祖父母に育てられている11歳の女子ティリーの、本をめぐる冒険の物語。
物語の冒頭、本の世界に耽溺するティリーに祖父母は現実の友人関係についてアドバイスを与えます。ここで、ありがちな「現実へ帰れ」系のお説教タイプの作品ではと警戒しましたが、これは早計でした。ティリーは祖母が友人と談笑している場面を盗み聞きします。会話のなかには「ダーシー」「ピングリー」といった聞いたことがあるような人名が出てきました。祖父は祖父で、灰色のインバネスコートに鹿撃ち帽というファンションでパイプをくゆらす男と話しています。こいつら、言ってることとやってることが違うじゃん。やがてティリーも、アン・シャーリーとアリスが「アンらしさ」「アリスらしさ」について論争するという夢のような場面に立ち会います。
両親不在の主人公には、当然謎があります。この出生の秘密もなかなかのもので、驚かせてくれました。
ティリーの相棒になるオスカーという少年がディスレクシアで本好きであるという設定もいいですね。オスカーは紙の本だけでなくオーディオブックも利用して読書を楽しんでいます。本との付きあい方や本の楽しみ方は多様であるという認識は、もっと広まってほしいです。