『キラキラ妖怪クラブ シラギク山のオニババ編』(丘紫真璃)

バカ一点突破の妖怪コメディ『イケてる! ろくろ首!!』の丘紫真璃が、またも怪作を出してくれました。古いもの好きなお父さんのわがままのせいで山中にある100さいの古民家に引っ越したなずなとせりの姉弟は、「やわらかーくてあまーい子ども」が大好物なオニババに襲われてしまいます。ならば子どもよりやわらかくてあまいものを与えて穏便に帰ってもらおうと、コンビニに誘いこみます。無数のコンビニスイーツを袋ごと丸呑みにしたオニババは腹痛で苦しみます。ここからてんぐの医者が出てきたり、逆さづりになったオニババがコンビニスイーツからとんでもないものを生成したり、意味不明な騒動が巻き起こります。
『イケてる! ろくろ首!!』でみられた、力業のギャグを連発する勢いのよさは健在です。
もうひとつの丘紫真璃の大きな長所は、三人称の語り口調の楽しさです。

ザッ!
何かが木の上から飛びおりてきて、2人の前に立ちはだかりました。
おばあさんです。ボロボロのキモノを着たしらが頭のおばあさん!
ギャアアアアアアアアア!!!!
2人は、心ぞうが、1000万kmもかなたにふっとんだみたいになって、グルリと向きを変えると、むちゅうでにげ出そうとしました。
でも、おばあさんときたら、
ビョ~~~~ンッ!!
2人の頭の上をラクラク飛びこえて、通せんぼしてきたんです。

語り手が読者以上に物語を楽しんでいるようで、その姿勢に誘われ読者も物語の世界に引きこまれていきます。ラストはこんなの。

アーア、かわいそうななずなとせり。
次はどんなおっそろしい目にあうのかな?

絶対語り手はかけらもかわいそうとは思ってない、絶対こいつが誰よりもおもしろがってる。おっそろしい目にあうかわいそうななずなとせりをたくさん拝めるように、長いシリーズになってもらいたいです。