『金色の約束』(松本聰美)

さいころ大親友だったのに疎遠になってしまった光輝と友彦の物語。ふたりが昔通っていた駄菓子屋的な店のじいちゃんが亡くなり、ふたり宛に大きなバッグを遺しました。バッグのなかに入っていたのは、じいちゃんのメッセージと砂金採りのための道具でした。バッグを預かった光輝は久しぶりに友彦に連絡を取りますが、なぜか友彦の方が乗り気でさっそくふたりで砂金採りに山に向かいます。
光輝はシングルマザーに育てられていて、友彦は裕福な医者の息子。友彦が都会の塾に通うようになったとき、友彦はふたりのあいだの経済格差に触れる発言をしてしまいます。それ以来、光輝は友彦に反感を持つようになってしまいました。ふたりで冒険をしているあいだも、光輝は格差を意識します。たとえば友彦がアウトドア知識を持っていることについても、経済力や文化資本の格差を感じてしまいます。一方、将来は当然医者になるものと期待されている友彦のほうも、光輝にはわからない重圧を感じていました。この本読んで知ったんですけど、医学部は自殺率が高いらしいですね。そんなふたりがじいちゃんの導きで関係を修復していくのが、この作品の流れです。大人の手の上で操られている感はありますが、じいちゃんの愛情の庇護が作品世界に温かみを与えています。「山・川・空」の難所といったミステリアスなメッセージの謎解き要素で、娯楽性も確保されています。
タイトルの意味が明らかになる収束のさせ方がうまいです。ふたりの今後の人生は険しい道になりそうですが、希望となるふたりの絆の永続性を信じさせてもらえます。よきBL児童文学でした。