『闇の礎 死のエデュケーション Lesson 3』(ナオミ・ノヴィク)

卒業の日に全員を生還させようという無謀な試みが成功した……かと思いきやオリオンがたったひとりで取り残されるという凶悪な引きが2巻のラスト。治安最悪の学園バトルファンジー三部作が、完結しました。
コネ持ちだったり野心家だったりする同期が学校の外の世界で暗躍を始めるなか、オリオンを失ったエルは世界を駆け巡って怪物を倒し人助けにいそしんでいました。そして自治領の秘密が明らかになり、オリオンの母親のオフィーリアが黒魔術師としての本性を現します。世界中の魔法自治領の命運をかけた嫁姑戦争が勃発……するのか!?
3巻のエルも善良で悪態をつきまくり、腕立て伏せをする姿を見せてくれます。絶望的な状況ですが、変わらない主人公の姿には安心させてもらえます。しかし、彼女に訪れる試練は過酷です。訳者あとがきでアメリカの有名作家の有名なSF作品が引き合いに出されているように、作品のテーマはそこに収束していきます。エルはよりましな選択をしようとしますが、自分のしていることもオフィーリアの所行とたいして変わらないのではないかと思い悩みます。すべてをぶち壊すことはできないので、漸進的にしか改革ができないのが難しいところです。
ただ読者はシリーズを通して、エルやオリオンならなにをやらかしてもおかしくないという信頼をすでに持っています。他人から理解されにくい苦しみを持っているがゆえのふたりの強さが希望になります。
最終章のタイトルが「スコロマンス」で終わるのが美しいです。エルは学校への憎しみが消えている事実にふてくされてしまいます。結局このシリーズは、最高の学校と最高の友だちの物語でした。