『葉っぱの地図』(ヤロー・タウンゼンド)

植物たちだけを友人としてひとりで野いばら村のはずれの小屋に住んでいる少女オーラの物語。もうすぐ村に感染症がやってくるとして、村の監督官アトラスはオーラの周囲の植物を焼き払おうとします。逆らったオーラはアトラスの屋敷に連行されます。孤独な戦いを強いられたオーラですが、運命のいたずらで兄の病気を治すために奮闘する少年イドリスとアトラスの姪のお嬢さまアリアナと行動を共にするようになります。三人は舟に乗って逃げ出し、時に反目しながらも病気の謎を解くための冒険を繰り広げます。

進めよ進め。荒れ野の森の、荒れ野の川。
オークのように古く、岩のように黒い川。
森には秘密。川には秘密。
旅は三日目。急げよ急げ。

周りが敵だらけで感染症の脅威まであるオーラたちの冒険には、なかなか緊迫感があり読ませます。でも、オーラに歌うように呼びかけてくる植物たちの声には励まされます。
病気の謎は、「おまえたち子どもには、おとなの世界の善悪がわからないだろう。苦しむ者がいてこそ、この世の中は回っていくのだ」という方向性だったので、日本の悪い児童文学のオタクは上野瞭だ、『日本宝島』だと盛り上がってしまいます。ただしこの作品は、子どもが自分のこわがる感情を受け入れることに希望を見出しています。