『シニカル探偵 安土真 2 七草館の大冒険』(齊藤飛鳥)

アクが強い奇人変人の子どもたちが〈放課後カイケツ団〉として探偵活動にいそしむシリーズの第2弾。カバーイラストは、目が死んでいる女子が平然とピッキングを成功させるシーンです。児童文学の主人公像としては、かなり斬新です。
戦闘狂の男子熊本歌樹(ウータン)が秘密基地にしていた七草館という空き家が突如心霊スポットとして有名になって大勢の人が出入りするようになってしまいました。その空き家を自分の居場所にしようともくろむ疫病神体質の女子渡辺さくらと性格最悪の自称探偵安土真は、ウータンに協力して七草館が心霊スポットになった原因を探ろうとします。そのためにまず、情報屋の女子伏見久美穂に恩を売って仲間に引きこもうとします。第2巻では久美穂が持ちこんだ依頼と七草館への突入の、大きくふたつの事件が描かれます。
久美穂が持ちこんだ依頼は、彼女の友だちで平安時代のお姫さまの生まれ変わりだという山田莉梵の悩みごとの解決でした。それは、SNSで再会した前世の恋人と実際に会うべきかどうかというもの。そいつは即座にお縄にかける一択なんですが、安土真は莉梵の前世設定は否定しないままで相手の嘘を暴き、会うことを断念させます。1巻では性格最悪にしか思えなかった安土真にも彼なりの優しさはあるのではないかと、彼の見え方が変わっていくところが2巻の見どころのひとつです。
まんまと久美穂を仲間に加え、いよいよ七草館攻略作戦が始まります。心霊スポットになった七草館は、いつも複数の肝試しグループが訪れていてお祭り状態。この作品世界は、治安が悪いというより治安がバカだといった方が正確かもしれません。
七草館の冒険では、豪快な大立ち回りあり手のこんだ心理トリックありで楽しませてもらえます。この冒険を通してデタラメなメンバーのあいだにも友情が成立したのでしょうか? とりあえず結成エピソードはこれでひとまず片づいたようです。きちんと読者への挑戦状がついているオーソドックスなミステリとしての質は高いので、キャラは突き抜けつつも安定したシリーズになってくれそうです。