『ほんとにともだち?』(如月かずさ/作 高橋和枝/絵)

くまのまあくんとたぬきのたんくんは、仲のいいともだちでした。その日もたんくんが遊びに来て、一緒に粘土をこねて遊んでいました。ところがたんくんが帰ったあと、まあくんのおねえちゃんが「まあくんとたんくんって、ほんとにともだちなの?」と尋ねてきました。おねえちゃんからすると、一緒にいてもおしゃべりもしないし笑ったりもしないふたりの関係は不思議だったのです。おねえちゃんが余計なことを言ったせいで学校のみんなのともだち関係と自分たちの関係が全く異なることに気づいてしまい、まあくんはたんくんと距離を置くようになってしまいます。
ともだち関係はそれぞれ多様なものですが、やはり幼いうちは型にはまった関係以外は正解ではないと思ってしまいがちです。そんな思いこみを優しく解きほぐしてくれる、よい作品です。成熟したともだち関係の手本として、釣りに行ったときに偶然出くわしてもほとんど話をしないまあくんのおとうさんときつねの関係を出してくる構成の手堅さにほっとさせられます。
高橋和枝の淡いイラストにも温かみがあってよかったです。たんくんの気持ちがこめられた色とりどりの花の色彩や、夕暮れの空のかすかな赤みが、作品世界の善性を穏やかに包みこんでいます。