「オ・ヤサシ巨人BFG」(ロアルド・ダール)

オ・ヤサシ巨人BFG (ロアルド・ダールコレクション 11)

オ・ヤサシ巨人BFG (ロアルド・ダールコレクション 11)

  • 作者: ロアルドダール,クェンティンブレイク,Roald Dahl,Quentin Blake,中村妙子
  • 出版社/メーカー: 評論社
  • 発売日: 2006/07/01
  • メディア: 単行本
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 8メートルもある巨人によってソフィーは巨人の国にさらわれてしまいました。巨人の国にはニンゲンマメ(人間)を食べるのが大好きな凶暴な巨人でいっぱい。ソフィーをさらったのは唯一人間を食べないオ・ヤサシ巨人だったのでとりあえず食べられる危険はありませんが、ほかの巨人に見つかったら大変なことになります。ソフィーは女王様に助けを求めておそろしい巨人達を退治してもらおうと思いつき、オ・ヤサシ巨人とともにロンドンの宮殿に向かいました。
 300ページ超とやや長めですが、細かいくすぐりと奇想がきいていて飽きさせません。激まずいオバケキュウリに泡が上から下へ下降していくために飲むと大きなおならがでる泡立ちエキス。巨人の世界の食べ物だけでこれだけのアイディアを披露する。オ・ヤサシ巨人が収集している夢の描写も面白いです。

あたし、ネコを一匹、おともに連れて、エヴェレスト山にのぼりました。

ぼくは、ガソリンの代わりに歯磨きで走る車を発明した。

あたしが「明かり!」って言うと、電燈がともり、「消えろ!」って言うと、消えます。

ぼくはたった八歳だけど、あごひげがモジャモジャ生えてきた。友だちがうらやましがってワイワイ。

あたしは高い窓からとびだして空中をヒラヒラとび、無事に着陸しました。

ぼくのペットのハチは、空中でロックンロールをおどる。

 たったこれだけの短い文で夢の楽しさを見事に表現しています。ここだけ切り取ってもすばらしい超短編だといえましょう。
 登場人物のキャラも立っています。巨人達の下品さや邪悪さはもちろん愉快に描かれています。わたしが気に入ったのは宮殿の執事のティプズさん。いきなりやってきた巨人の接待という無理難題を淡々とこなすさまがかっこいいです。こういうのはよきイギリスという感じがします。