2021-01-01から1年間の記事一覧

『莉緒と古い鏡の魔法』(香坂理)

莉緒と古い鏡の魔法作者:香坂 理朝日学生新聞社Amazon第11回朝日学生新聞社児童文学賞受賞作。影が薄い系女子の莉緒は、突然のなりゆきでアンティークショップの洋館で暮らすことになります。そこにあった小箱から人の願いを叶える力を持つが危険なチャーム…

『はなの街オペラ』(森川成美)

はなの街オペラ (くもんの児童文学)作者:森川成美くもん出版Amazon大正時代、栃木から東京の音楽家の屋敷に奉公に出たはなは、そこで書生をしていた美青年響之介に導かれるように芝居の世界に入っていきます。 エンタメとしての出来は満点です。なにも持たな…

『シルリアのひとみ』(奥山和子)

1975年理論社刊のSF児童文学。様々な宇宙人が地球で生活している23世紀の未来を舞台にした宇宙冒険活劇です。太陽系パトロール長官の父を持つユリカは、宇宙銀行の貴重品預かり証である銀の腕輪をつけられていました。山育ちのユリカがトウキョウの銀河小学…

『こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ』(岡田淳)

こそあどの森のおとなたちが子どもだったころ (こそあどの森の物語)作者:岡田 淳理論社Amazon2017年に完結した「こそあどの森」の番外編が出ました。森の住人たちと再会をはたせたことに、感謝しかありません。では、この感謝はなにに捧げればよいのか、それ…

『夜明けをつれてくる犬』(吉田桃子)

夜明けをつれてくる犬作者:吉田 桃子講談社Amazon美咲は言葉を口にだすことが苦手な子。唯一の友だちであった犬のレオンを亡くしてから、うまくいかないことの多い彼女の日々はさらに暗いものになりました。しかし、生花店でレオンにそっくりの犬と出会った…

『ママたちとパパたちと』(グンネル・リンデ)

ママたちとパパたちと作者:グンネル・リンデ冨山房Amazon1976年のスウェーデンの児童文学短編集。家族と性の多様性をテーマにした作品が並んでおり、その問題提起は現代でも通用するものになっています。が、子どもが軽はずみに魔法を使ってしまう作品世界で…

『晴れた日は図書館へいこう 夢のかたち』(緑川聖司)

晴れた日は図書館へいこう 夢のかたち (ポプラ文庫ピュアフル)作者:聖司, 緑川ポプラ社Amazon角野栄子の「魔女の宅急便」シリーズや斉藤洋の「ルドルフとイッパイアッテナ」シリーズなどのように、忘れたころに新刊が出るゆったりペースが許容されるところが…

『ぼくが消えた日』(金重剛二)

1974年偕成社刊。SFなのか不条理ものなのか判然としない奇妙な作品です。 主人公の道雄が「少年の科学」という雑誌の反物質に関する記事を読む場面から、物語は始まります。道雄はじぶんとそっくりな〈反ぼく〉と出会ってしまい、なぜか公園のベンチに変身し…

『ひかりの森のフクロウ』(広瀬寿子)

ひかりの森のフクロウ作者:寿子, 広瀬発売日: 2020/10/29メディア: 単行本 かすかな音がした。 木や草が、まるで森のように茂った庭。その庭のおくにある小さな家の中で、音がした。 古びたその家には、だれも住んでいないと、哲は思っていた。でも、たしか…

『銀河へのエレベーター』(金重剛二)

1971年理論社刊のSF児童文学。タイトルにある、デパートのエレベーターが宇宙につながっているという奇想は楽しげですが、内容はなんとも不気味で暗い侵略SFです。 まず、主人公の造形からして暗いです。小学6年生の幸平は、心臓弁膜症のため体が弱く、いつ…

『見知らぬ友』(マルセロ・ビルマヘール)

見知らぬ友 (世界傑作童話シリーズ)作者:マルセロ・ビルマヘール発売日: 2021/02/12メディア: 単行本アルゼンチンの作家による短編集。オーガフミヒロのイラストも狂気に満ちていて、他にない趣のある本になっています。 人生の苦みを感じさせる味わい深い短…

『撮影中につきおしずかに! 1 特殊効果に魔法少々』(にかいどう青)

撮影中につきおしずかに!(1): 特殊効果に魔法少々 (ポプラキミノベル に 1-1)作者:にかいどう 青発売日: 2021/04/14メディア: 単行本 「ウサギの足ってさ、むかしは切りとってお守りにしてたんだって。興味深いね」 ポプラ社の児童文庫新レーベル「ポプラキ…

『みんなふつうで、みんなへん。』(枡野浩一)

みんなふつうで、みんなへん。 (読書の時間 5)作者:枡野浩一発売日: 2021/01/06メディア: 単行本3年1組の子どもたちの勘違いや思い違いをテーマにしたショートストーリー集です。先生から「ボールをわすれずに」と言われたのを自分に都合よく解釈してずっと…

『わたし、パリにいったの』(たかどのほうこ)

わたし、パリにいったの作者:たかどのほうこ発売日: 2021/03/22メディア: 単行本姉妹の関係性とはなんなのか、これは永遠の難問です。少なくとも姉には先に生まれたというアドバンテージがあるはずですが、だからといって力関係が姉の方が上とは限らないのが…

『たいへんたいへん』(渡辺茂男/やく 長新太/え)

たいへんたいへん(イギリス昔話) (「こどものとも」人気作家のかくれた名作10選)発売日: 1998/03/01メディア: 単行本イギリスの昔話を元にした絵本。訳が渡辺茂男でイラストが長新太なので、信頼感しかありません。 頭上になにか落ちてきたことから「そらが …

『スーパー・ノヴァ』(ニコール・パンティルイーキス)

スーパー・ノヴァ作者:ニコール・パンティルイーキス発売日: 2020/11/24メディア: ハードカバーノヴァは「読めず、話せず、重い知恵遅れ」だと大人たちから思われている女子。姉のブリジットだけがノヴァに知性があることを理解していて、ノヴァの大好きな宇…

『ずっと一年生!?  トラブル解決大作戦』(宗田理)

ずっと一年生!? トラブル解決大作戦 (角川つばさ文庫)作者:宗田 理KADOKAWAAmazon2003年に角川文庫で刊行された『マミーよ永遠に』がつばさ文庫化されました。名門校私立生生学園高校には、先生よりも権力を持った名物生徒がいました。留年を繰り返してずっ…

『サイコーの通知表』(工藤純子)

サイコーの通知表 (文学の扉)作者:工藤 純子発売日: 2021/03/04メディア: 単行本2019年の『あした、また学校で』で子どもたちに「学校は、だれのものかって……考えたことはありませんか?」と問いかけたちょっと頼りなさそうな先生、ハシケン先生のクラスの物…

『世々と海くんの図書館デート 3 ハロウィンのきつねは、いたずらな魔王様といっしょにいたいのです。』(野村美月)

世々と海くんの図書館デート(3) ハロウィンのきつねは、いたずらな魔王様といっしょにいたいのです。 (講談社青い鳥文庫)作者:野村 美月,U35発売日: 2021/04/14メディア: 新書3人の姉に愛されて育ったピュアなきつねの世々と、イケメンで秀才だけど家族関係…

『人類滅亡フラグがたちました! 』(令丈ヒロ子)

人類滅亡フラグがたちました! ぼくらが決める七つの未来(アクム)作者:令丈 ヒロ子PHP研究所Amazon7人の中学1年生がカンノン像のような宇宙人に拉致されました。このままでは地球は終わってしまうと憂えている宇宙人は子どもたちに理想の世界を問い、それをシ…

『いちご×ロック』(黒川裕子)

いちご×ロック作者:黒川 裕子発売日: 2021/04/22メディア: 単行本エリート街道を進む両親とストレートで理Ⅰに進学した姉を持つ海野苺は、高校受験に失敗しそこそこの高校でそこそこのいい成績しかとれなくなったたためすっかり母親から見限られていました。…

『がろあむし』(舘野鴻)

がろあむし作者:舘野 鴻発売日: 2020/09/16メディア: 大型本独特の昆虫絵本で知られる舘野鴻の新作。まず、カバー全体を覆うビッグサイズのがろあむしの姿に圧倒されます。しかしページをめくると鳥瞰で川と町にはさまれた森が描かれます。そこから主な舞台…

『地の底へ行くんだ』(杉山径一)

地の底へ行くんだ (創作童話・7)作者:杉山径一メディア: 単行本『けむりの家族です』に続いて杉山径一の昭和アングラ児童文学を読んでみました。1973年、小峰書店刊。イラストは小林与志です。 主人公の少年一平の元に奇妙な手紙が届けられるところから、物…

『わたしたちの物語のつづき』(濱野京子)

わたしたちの物語のつづき (読書の時間 6)作者:濱野京子発売日: 2021/02/26メディア: 単行本小学6年生の碧衣は、転校していった親友との仲がぎくしゃくしたままであることに悩んでいました。そんなとき学校の昇降口で、妖精が主人公の物語の書かれたノートを…

『チェリー・シュリンプ』(ファン・ヨンミ)

チェリーシュリンプ わたしは、わたし作者:ヨンミ, ファン発売日: 2020/12/01メディア: 単行本韓国の児童文学。ダヒョンはクラス替え時の席替えで最悪の席を引いてしまったため、落ちこんでいました。周囲にあまり打ち解けようとしないウンユの隣になってし…

『Mガールズ』(濱野京子)

Mガールズ作者:濱野 京子発売日: 2021/02/20メディア: 単行本COVID-19は終息したがARSウィルスという新たな疫病が猛威を振るっている近未来を舞台にしたディストピアSF(だということにしたい)。分断された世界の子どもたちがストリートダンスという趣味を…

『見た目レンタルショップ 化けの皮』(石川宏千花)

見た目レンタルショップ 化けの皮作者:宏千花, 石川発売日: 2020/11/20メディア: 単行本読売中高生新聞連載作。狐の力で人々に容姿をレンタルする店に訪れる顧客たちの物語です。第1話では、自分の容姿に自信のない女子五月が美少女の容姿を借りて、おしゃれ…

『町にきたヘラジカ』(フィル・ストング)

町にきたヘラジカ (児童書)作者:フィル・ストング発売日: 2021/01/16メディア: 単行本かつて学研から1969年に刊行された『町にきたヘラジカ』*1が徳間書店から復刊。訳は瀬田貞二先生なので、良質であることは請け合いです。 ミネソタ州のビワビクという寒い…

『わたしのあのこ あのこのわたし』(岩瀬成子)

わたしのあのこ あのこのわたし (わたしたちの本棚)作者:岩瀬 成子発売日: 2021/01/21メディア: 単行本 傷はつけられたのだ。それをなにもなかったように思うことなんてできない。胸の中にしこりのようなものがあった。しこりがゆるしたがらなかった。そのし…

『強制終了、いつか再起動』(吉野万理子)

強制終了、いつか再起動作者:吉野 万理子発売日: 2021/02/24メディア: 単行本私立中学に転校したばかりで学校になじめていない加地隆秋は、家庭教師の大学生のすすめで大麻に手を出してしまいます。そこに、隆秋をYouTubeの動画の素材として使いたいと思って…